「こちらあみ子」(楽天ブックス/単行本・文庫本:電子書籍版もあります)は、芥川賞作家である今村夏子さんのデビュー作で、風変わりで純粋な少女・あみ子の幼少期から中学生時代までを描いた中編小説です。あみ子は4人家族の長女として、自宅で習字を教える母、面倒見のいい兄、優しい父に囲まれて育ちますが、周囲の人々とのコミュニケーションに苦労します。正直で感じたままを表現するあみ子は、徐々に周囲から距離を置かれるようになります。
物語は、あみ子が15歳のときに祖母の家に引っ越すまでの過去を回想する形で進行します。母が開いている書道教室に通う同い年の少年・のり君に惹かれるも、彼はあみ子を無視します。あみ子の母はやる気をなくし、兄は不良になってしまいます。あみ子はその原因が解らず、日々を過ごします。
あみ子の家族は、彼女の風変わりな行動によって次第に変化していきます。母は死産を経験し、書道教室をやめ、兄は暴走族に入り家に帰らなくなります。あみ子は中学に入学し、兄が「田中先輩」と呼ばれ恐れられていることを知りますが、兄と「田中先輩」を結びつけることができません。
ある日、あみ子の担任が三者面談のため家を訪れます。その後、父はあみ子に引っ越しを提案します。あみ子は母との離婚を予想しますが、父は明確な答えを与えません。中学卒業と同時に、あみ子は祖母の家に引っ越し、父は一緒に来ませんでした。
感想:
この作品は、あみ子という一風変わった女の子の視点を通して、彼女の周囲の人々との関係や、彼女自身の内面的な世界を描いています。
あみ子は他人から見れば少し変わっているかもしれませんが、純粋で無垢な性格を持っています。彼女は自分らしく自由に振る舞い、周囲の大人たちからは応援したくなるような側面もあります。しかし、あみ子の特有の特性が家族に複雑な感情を抱かせました。
物語はあみ子の現在の生活から始まり、彼女の記憶を追いながら進行します。あみ子の家族や、彼女が想いを寄せるのり君との関係も描かれており、あみ子の視点から見た世界が独特の魅力を放っています。
あみ子の行動には必ず理由があることを理解し、彼女を中心に様々なことを考えるきっかけを得ることができます。あみ子のエネルギッシュで子供らしい姿勢は、ページをめくる手を止めさせませんでした。
この小説は読む人によって異なる受け取り方ができる作品であり、あみ子の人生経験や家族の優しさ、そして彼女の周囲の人々との関係性について、深く考えさせられる内容となっています。「こちらあみ子」は、あみ子という個性的なキャラクターを通じて、人間関係の複雑さや、社会の中での個人の立ち位置について考察する機会を提供してくれる作品だと思います。
※映画化(主演:大沢 一菜(おおさわかな)その他の出演:井浦新, 尾野真千子)された作品は、昨年年末の「年忘れ映画劇場」という深夜のテレビ番組で放送されていて、初めて観て、あみ子のやることなすことや誕生日にもらったトランシーバーのことなど、非常に大きな衝撃を受けました。
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こちらあみ子
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