「くもをさがす」西加奈子/あらすじ

 乳がんにかかったことをきっかけに、抗がん剤による治療や手術と闘った毎日を記録しています。コロナ禍での生活やカナダでの医療方法などに戸惑います。たとえば、両乳房切除手術を受けますが日帰りで行われるなど、日本とは異なる医療体制に驚きます。しかし、多くの人々に支えながら過ごした日々が綴られています。この作品の面白さは、医療関係者との会話が大阪弁になっていることです。緊迫した状況を和らげてくれています。

 本人の体験や心情をありのままに描いていて、直面した病気、選択した治療法、副作用との闘い、そして時折訪れる幸せと喜びの瞬間を素直に描き出しています。これらはすべて、彼女の作品に生々しく反映されています。また周囲の人々の優しさや、関西弁で表現されるユーモラスなエピソードが、重苦しいテーマの中でも独特な印象を与えています。

 闘病生活中は、自分の体は自分のものだと意識し、他人の目を気にせずに生きることの大切さ、弱さを認めてそれを受け入れることの大切さなどを学びます。生きることの意味や価値観を見出し、祈りと決意に満ちた日々を過ごします。

 この作品は本人が「世界で一番、人生で一番自分の体を愛した、いつくしんだ8か月の記録」と述べています。その言葉が示す通り、西加奈子さんは自分の体と真摯に向き合い、自己理解を深化させ、自身を愛する旅路を描き出しています。それは、彼女が自分の体と誠実に対話し、自己愛のプロセスを描いていることを示しています。がんと闘いながらも、自分らしく生きることの大切さが描かれています。西加奈子さんの生き方や考え方から、多くの人が勇気と希望を得られるでしょう。

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