作者について:
「コンビニ人間」(文庫本:電子書籍版もあります)は村田沙耶香さんによる日本の小説で、2016年に「文學界」(文藝春秋)から出版されました。この作品は第155回芥川龍之介賞を受賞しました。
村田沙耶香さんは1979年生まれの小説家・エッセイストで、玉川大学文学部を卒業後、2003年に「授乳」で群像新人文学賞優秀賞を受賞しました。彼女は「コンビニ人間」の執筆背景として、実際にコンビニエンスストアで週3回働いていた経験を活かしています。またこの作品は約30の言語に翻訳され、世界中で読まれています。
作品の概要:
「コンビニ人間」は、コンビニでのアルバイト歴18年目の36歳独身女性である主人公古倉恵子がコンビニのアルバイトとして生きる様子を描きながら、社会の「普通」の枠にはまらない生き方を探求する物語です。古倉は子どもの頃から変わり者で人間関係や恋愛経験が希薄でしたが、コンビニでの仕事を通じて自分なりの居場所を見つけ、自己実現を図ります。この作品は、社会の圧力や個性と合理的な選択との葛藤を浮き彫りにし、読者に対して「普通とは何か」という問いを投げかけ、多くの共感と議論を呼んでいます。
あらすじ:
恵子は18年間同じコンビニでアルバイトを続けており、社会の一員としてのアイデンティティをコンビニ店員として見出しています。彼女は幼い頃から周囲とは異なる考え方を持ち、そのために、しばしば周囲から異端児扱いをされてきました。しかし、コンビニでの仕事を通じて、マニュアルに沿った行動や他人の真似をすることで「普通の人」のように振る舞う方法を学びます。
物語の中で、恵子はかつてのアルバイト仲間である白羽と再会し、利害が一致したことから同棲を始めます。白羽は社会に馴染めない人物で、恵子と同様に異端の存在です。二人は書類上の結婚をし一緒に暮らすことになりますが、恋人らしい関係ではなく、あくまで共同生活者としての関係です。
恵子はコンビニを辞めて就職活動を始めますが、コンビニでの仕事がなくなると、自分の日常がどのように機能していたのかを見失います。最終的にはコンビニ店員としての自己実現を再認識し、白羽と別れてコンビニ店員として生きることを決意します。
この作品は、社会の中で「普通」であることの意味や、個人が社会に適応するためにどのように振る舞うべきか、そして自己実現のあり方について深く掘り下げています。恵子のキャラクターは、既存の観念に囚われない生き方を選択し、自分の信念に基づいて生きる強さを示しています。
レビュー:
- 普通とは何かを考えさせる作品でした。主人公は社会不適合であり、自分が普通ではないことを理解していながらも、向き合おうとする姿勢が好印象を持ちました。
- 人は周りの影響を受けて変化していきますが、恵子は自分を合わせることなく生きていく決意をしています。環境と不可分な人間、そして環境に従順である人間、また環境を変えようとする人間の対比が興味深かったです。
- 不気味さと共感です。主人公のリアリティライン内側のサイコパス的な描写が怖さを引き起こします。一方で、彼女に対する嫌悪感が後半で周囲の人間に向いてしまうことについて共感しました。
- 恵子は周囲に合わせることをしないヤバい奴であり、白羽の視点の世界も見てみたいと思いました。
- 人は自分以外を偏見の目で見ることがありますが、多様性を認めることが大切であると気づかされました。
- 最後に結論を言わず、主人公がまたコンビニに帰りたくなる展開が面白かったです。
- 普通でないことが社会では受け入れにくいことを考えさせられる作品となっています。
「コンビニ人間」は普通という概念を問い直し、個性と社会の関係を探求する興味深い作品です。普通と個性、社会の圧力と自己のあり方について考えさせる作品として、多くの読者に支持されています。
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コンビニ人間
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