「余命一年と宣告された僕が、余命半年の君と出会った話」森田碧／あらすじ／感想

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作品概要：
あらすじ：
感想：

作品概要：

「余命一年と宣告された僕が、余命半年の君と出会った話」（楽天ブックス／文庫本・楽天Kobo 電子書籍）は、森田碧（もりたあお）さんによる説です。この物語は、心臓病で余命一年と宣告された高校一年生の早坂秋人が、同じく重い病気で余命半年と宣告された少女、桜井春奈と出会うところから始まります。二人は病院で出会い、互いの病気を隠しながらも次第に心を通わせていきます。彼らの切なく儚い恋が描かれています。

この作品は、2021年にポプラ社から刊行され、2023年には漫画化、2024年にはNetflixで映画化されることが発表されました。

あらすじ：

「期限付きの恋」

　物語は、高校生の秋人が入院生活を終えて退院する日から始まります。秋人は病室でカラスの絵を描いており、それが彼の小さな楽しみとなっていました。退院の日、彼は母と妹に迎えられますが、病院の廊下で同じく入院患者と思われる黒髪の少女と擦れ違います。この少女に強く心を惹かれる秋人は、その後も彼女のことを思い出し続けます。
　秋人は学校に戻り日常生活を送りますが、授業にはあまり関心を持てず、絵を描くことに逃避します。彼はクラスメイトや幼馴染と交流しながらも、自分が余命一年の宣告を受けていることを知っており、その重圧に苦しんでいます。特に親友の絵里や朔太に対しても自分の状況を話せずにいます。
　心臓の病気で余命を告げられた秋人は、未来の不確実性に悩みながらも、日常の小さな出来事に救いを見出します。ある日、彼は学校の帰りにふとしたことで再びあの少女のことを思い出し、彼女も同じように病気と戦いながら絵を描いているのではないかと考えます。
　物語は、秋人の内面の葛藤と、彼が絵を描くことで感じる一瞬の安らぎ、そして彼の心に深く刻まれた少女との偶然の出会いが中心に描かれています。彼の余命を知らない家族や友人との関係も繊細に描かれ、彼がどのようにこの厳しい現実と向き合っていくのかがテーマとなっています。

　五月が終わり六月になり、秋人は季節の移り変わりを感じます。自分が心臓病で次の五月には生きていないことを思い、今の風景が愛おしく思えます。以前は自転車で通学していましたが、病気が発覚してからはバス通学に切り替えました。絵里というクラスメイトとは以前のように楽しく話せなくなり、彼女に対する恋心も病気のせいで諦めることにしました。
　授業中、秋人は絵を描いて過ごし、数学の小テストはほとんど解けませんでした。放課後、絵里に一緒に帰ろうと誘われますが、途中で彼女に膝が痛いというのは嘘でしょと問い詰められます。本当のことを言いたくない秋人は彼女に背を向けます。
　家に帰ってネットで「自分が死ぬ前に何をするか」と質問し、他人の回答を参考にします。翌日、病院で“会いたい人”である名前も知らない少女に再会します。彼女の名前が桜井春奈だと知り、彼女と話すことで少し落ち着きを取り戻し、再び彼女に会いたいと思います。

　秋人は余命宣告を受けてから四ヶ月が経過し、残り八ヶ月の命を意識しながらも実感がないまま過ごしています。ある日、彼は美術部の友達や噂話に取り巻かれながらも、病気の春奈を見舞うために花屋に立ち寄ります。そこで選んだ花を病院に持っていきますが、春奈は寝ているため、彼女が描いた絵を眺めたり、自分も絵を描いたりして時間を過ごします。春奈が目を覚ました後、彼は花の花言葉について話し、彼女の無表情に不安を覚えながらもその優しい微笑みに安心します。次の日、彼は春奈の会いたい人を探しに、クラスメートの三浦綾香さんに話しかけます。

　数日後、秋人は春奈の父親が亡くなったことを知ります。「もうすぐ会えるから」という春奈の言葉を誤解し、父親が忙しいだけだと思い込んでいました。春奈の母親から、彼女の父親が春奈を見舞いに行く途中で事故に遭い亡くなったことを聞きます。春奈は自分のせいで父親が事故に遭ったと悔いていました。
　秋人は春奈の話を聞きながら、自己中心的だった自分の過去と対比します。春奈は友人の三浦さんを大切にしていましたが、現在は疎遠になっていました。春奈の母親は、秋人との出会いが春奈を元気づけていると話します。秋人は春奈に会いに行くため、学校をサボって病院を訪れ、花を贈ります。春奈は六本のガーベラに「あなたに夢中です」という意味があることを知っていました。
　春奈は自分の病気が治らないことを知り、友人との再会を避けていました。秋人はその気持ちに共感しつつも、自分も誰にも病気のことを話せないでいました。春奈は未来のない自分の代わりに、秋人に長生きしてほしいと願っていました。

「夜空に咲く花」

　秋人の病気は症状が現れず突然死することもあるため、できれば突然死を望んでいるが、見苦しい状態では死にたくないと思っています。父親が家族旅行を提案しますが、秋人は冷たく拒否し、内心では素直になれない自分に苛立ちます。その後、秋人は夏休みに何をするべきか考え、春奈に会いに行くことや祖父母に会うこと、親孝行をすることなどをノートに書き留めます。三浦さんを春奈に会わせるために奮闘し、春奈との花火大会の約束を果たすために計画を立てます。家族旅行にも前向きになり、家族と一緒に過ごす時間を大切にすることを決意します。

　秋人は病室で友人の絵里と朔太の訪問を受けます。絵里が買ってきた花を飾り、朔太が秋人の病気について話さなかったことを非難しますが、秋人は同情されるのが嫌で黙っていたと答えます。絵里も秋人の病気を知っており、話してほしかったと涙します。秋人は春奈にも病気を話さず、リハビリに専念しながら絵を描きます。花火大会の日、雨で中止を期待しますが、最終的には晴れ、春奈と電話で花火を見ながら話します。絵里と朔太の訪問後、秋人は退院し、春奈の病室を訪れます。絵を描く春奈と再会し、毎日訪れると約束します。

「涙の理由」

　三浦さんは毎日春奈に会いに病院に通っていましたが、その結果、友人達との関係が疎遠になりました。しかし、彼女は春奈との時間を大切にし、本心から春奈と過ごすことを望んでいました。秋人も同様に春奈を見舞いに行き、三浦さんと一緒に病院に行くこともあったため、付き合っているという噂が立ちました。学校では学園祭の準備が進んでおり、秋人のクラスはチョコバナナを販売することに決まりました。
　ある日、春奈は「恋をしてみたかった」と秋人に告白しますが、余命が短いことから恋愛を諦めていました。しかし、秋人は彼女に「今からでも遅くない」と励まします。学園祭の日、春奈は外出許可を得て学校に来ることができ、秋人と一緒に楽しみました。しかし、途中で母親から急用で病院に戻るように言われますが、秋人のお願いで一時間だけ延長できました。
　その後、三浦さんのクラスの劇「白雪姫」を観るために体育館に行きます。劇の開始前に春奈の母親が帰ることになり、秋人と春奈は劇を楽しむことができました。

　春奈が目を覚ましたのは二日後の昼頃でした。秋人は彼女から心配をかけたことを謝るメールを受け取り、放課後に病室を訪れると、三浦も既に来ていました。三浦が帰った後、二人きりになった秋人と春奈は、初めて会った日のことを思い出し、彼女が孤独を感じていたことを話します。春奈は自分が余命宣告を受けてから半年過ぎていることを告白し、秋人は希望を持ち続けることの大切さを伝えます。彼女は一日でも長く生きることを決意しますが、次の日から再び意識を失います。
　春奈の意識が戻らないまま、一週間が過ぎました。秋人は毎日病室に通い、ガーベラの花を持ってきます。三浦もまた春奈の目覚めを待ち続けています。秋人は春奈が眠る傍らでスケッチブックに絵を描きながら、彼女との思い出を振り返ります。春奈の決意と闘いに心を打たれた秋人は、自分の病気と向き合い、彼女に自分の気持ちを伝える決意をします。しかし、春奈の容態は悪化し、彼女が目を覚ますことはありませんでした。
　ある日、秋人は絵里と朔太と神社を訪れ、健康祈願のお守りを購入します。おみくじを引いた秋人は凶を引いてしまうが、春奈のためにもう一度おみくじを引きます。帰宅後、彼は春奈の回復を祈り続けます。

「届いた想い」

　いつもと変わらない日曜日、秋人は午後から春奈のお見舞いに行こうとしていましたが、目を覚ましたのは午前十時過ぎでした。携帯電話を見ると、三浦さんからのメールや着信がたくさん届いていました。嫌な予感がしてメールを開けるのを躊躇っていると、再び三浦さんからの着信があり、春奈が亡くなったという知らせを聞きます。ショックで泣き崩れ、何も信じられない秋人は病院に向かいますが、春奈は既に亡くなっていました。
　葬儀の後、秋人は春奈からの手紙を受け取ります。手紙には「秋人くんのおかげで、私は幸せだった」と感謝の言葉が綴られていました。その手紙に触発され、秋人は自分も病気と闘い続ける決意をします。
　手術は成功し、入院生活を送りながら春奈のことを思い続けます。ある日、偶然見つけた春奈のブログを読むことで、彼女の本心や思いを知ります。ブログの内容にコメントを残しながら、秋人は春奈との思い出を大切にし、彼女の意志を胸に前を向いて生きることを誓うのでした。

「エピローグ」

1.退院と家族との再会：
　秋人が退院し、家族とのドライブを楽しむ様子が描かれています。家族は久しぶりに一緒に時間を過ごし、楽しい会話が交わされます。秋人は春奈の話を家族に話し、心温まるひとときを過ごします。

2.学校への復帰：
　秋人が学校に復帰し、心臓病のことがクラスに知られる中、友人やクラスメートとの再会を果たします。心臓病の影響で、自分の気持ちを伝える大切さを再認識し、前向きに生きる決意を新たにします。

3.美術室での活動：
　秋人は美術室で久しぶりに絵を描き始めます。絵を描くことで、春奈との約束を果たし、第二の人生のスタートを切ることを決めます。完成した絵は、春奈との思い出を美しく表現した作品です。

4.春奈の墓参り：
　秋人は春奈の墓参りに行き、ガーベラの花を供えます。花の意味を知ることで、春奈の気持ちを再確認し、涙を流します。春奈の愛を感じながら、自分の気持ちを新たにしていきます。

5.感謝の気持ちと未来への決意：
　秋人は春奈からの愛を感じ、彼女に感謝の気持ちを伝えるコメントをプログに書き足します。最終的には、春奈が描いた虹を見上げながら、彼女との思い出を胸に抱きつつ、前に進む決意を固めます。

　秋人が春奈との関係や自己成長を通じて、心の整理と未来への希望を見出していく様子が描かれています。

感想：

　この作品には、いくつかの感動的なシーンがありました。

病院の屋上での出会い：
秋人が病院の屋上で絵を描いている春奈と初めて出会うシーンです。春奈が自分の余命をさらりと告げることで、秋人は彼女に興味を持ち始めます。
二人の秘密の共有：
秋人と春奈が互いの病気を隠しながらも、次第に心を通わせていく過程も印象に残りました。特に、秋人が春奈のために自分の残りの時間を使おうと人生の一大決心をする箇所は感動的です。
春奈の決意：
秋人のお陰で春奈が闘病を決心するシーンです。彼女の強い意志とそれを支える秋人の存在が描かれています。切ないの一言だけでは済まされないと思いました。
秋人の延命手術：春奈の死後、秋人が彼女のために延命手術を受ける決意をするシーン。彼は余命一年と言われていたのを三年間生き続けました。

　二人の切なくも美しい関係は深く心に響きました。