「スピノザの診察室」夏川草介/あらすじ/感想

あらすじ:

 この物語の主人公は、雄町哲郎(通称マチ先生)という内科医です。以前は大学病院に勤務していましたが、30代後半を迎えた頃、最愛の妹を若くして亡くし、心に深い傷を負います。

 それを境に甥っ子と暮らすために地域病院に移ります。哲郎は医療現場での厳しい現実に直面しながらも、患者一人一人や仲間達と真面目に寄り添い、希望の灯りを灯し続けます。医師としての使命感と自身の内面の葛藤を抱えながら、日々の診療に尽力しています。病院では、急性期ではなく回復が望めない患者を多く診療しています。そこに研修医の南茉莉が送り込まれ、哲郎の医師としての力量に惚れ込んでいきます。

 哲郎の医療に対する考えは、哲学者スピノザの思想に影響を受けています。この作品は哲郎が出会う様々な人々との結びつきを通して、幸福とは何か医療とは何かを問いかける作品です。

登場人物:

  • 雄町哲郎(マチ先生):京都の地域病院で働く内科医
  • 美山龍之介:雄町哲郎の甥っ子 中学一年生
  • 鍋島治:病院に勤務する外科医
  • 中将亜矢:病院に勤務する外科医
  • 秋鹿淳之介:病院に勤務する内科医
  • 花垣辰雄:大学の准教授
  • 南 茉莉:大学の内科の研修医

「スピノザ」の意味:

  • 小説のタイトルにある「スピノザ」は、17世紀の哲学者バルーフ・スピノザを指しています。
  • スピノザは心身二元論を否定し、自然と神を一体のものと捉えた汎神(はんしん)論の思想家として知られています。
  • 主人公の内科医・雄町哲郎はスピノザの思想に共感しており、患者との関係性の中で、生と死、自然と人間の関係性について考えを巡らせます。

作者の作品の特徴:

感想:

 登場人物がどれも魅力的で、頼もしい気持ちになりました。医療現場での心温かい人間模様が丁寧に描かれていて感動しました。

 医療従事者の生き方や価値観についても考えさせられました。哲郎が大学病院から地域病院に移ったことで、医療の本質的な意味を見出していく過程が描かれています。医療の現場で働く人々の姿勢や葛藤を通して、人の幸せとは何かを深く探求しているのが特徴的です。

「スピノザの診察室」は医療と人生の物語を通して、人の幸せについて考えさせられる、心温まる傑作だと言えるでしょう。夏川草介さんの代表作の一つとなりそうです。

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