青山美智子さんの「赤と青とエスキース」(楽天ブックス/単行本・電子書籍)は、メルボルンの画家が描いた一枚の絵画が、日本へ渡って30数年経過し、その絵画が奇跡を起こす物語です。
青山美智子さんは愛知県出身で横浜市在住の小説家です。愛知県立瀬戸西高等学校と中京大学社会学部社会学科を卒業しました。大学卒業後にワーキング・ホリデーでオーストラリアへ行き、その後シドニーの日系新聞社で記者として2年間勤務しました。雑誌編集者を経て執筆活動を始めました。
2003年に「ママにハンド・クラップ!」で第28回パレットノベル大賞の佳作を受賞しました。
2017年に単行本「木曜日にはココアを」(楽天ブックス/文庫本・電子書籍)で小説家デビューしました。
2022年に本作品で本屋大賞にノミネートされました。
あらすじ:
「赤と青とエスキース」は、メルボルンの画家が描いた一枚の「エスキース」というタイトルの絵画を中心に展開する物語です。この絵画は日本へ渡り、30数年の間に「ふたり」の間で奇跡を編み出します。
※本来、「エスキース」とは、デザインや設計の構想を練るために描かれるスケッチ、下絵のことです。
物語はメルボルンに留学中の女子大生・レイと現地に住む日系人・ブーの恋愛から始まります。二人は「期間限定の恋人」としてつき合い始めますが、留学期間が過ぎればレイは帰国しなければならないという事実に直面します。
次に日本の額縁工房に勤める30歳の額職人・空知(そらち)の物語が始まります。空知は既製品の制作を続ける日々に戸惑いを感じていましたが、かつてメルボルンで出会った画家、ジャック・ジャクソンが描いた絵画「エスキース」に出会い、人生が変わります。
その後、中年の漫画家タカシマの元でアシスタントをしていた若手漫画家の砂川が、「ウルトラ・マンガ大賞」を受賞します。雑誌の対談の相手として砂川がタカシマを指名したため、二人は久しぶりに顔を合わせます。
最後にパニック障害を発症してから休養している51歳の茜の物語が描かれています。茜は元恋人の蒼と以前同棲していたアパートを訪れます。
物語はエピローグで結びつき、水彩画の巨匠となったジャック・ジャクソンの元に、20代の頃に描いたある絵画が戻ってきます。これらの物語は時空を超えてつながり、人々の人生を豊かに彩ります。
登場人物:
レイとブー
メルボルンで交換留学生として過ごすレイと現地の日系人男性ブーの間に生まれた恋愛物語です。
空知
額縁職人である空知はある絵に出会い、その絵画が人生に影響を与えます。
タカシマと砂川
ベテラン漫画家タカシマの元でアシスタントをしていた若手漫画家の砂川が漫画界で注目されています。
茜
パニック障害のため休暇を取っている51歳の茜は、別れた恋人である蒼の部屋にパスポートを置いてきてしまったことを思い出し、彼の元を訪れます。
蒼
茜の元恋人で、ある日茜に連絡を入れ、一緒に住んでいたアパートを訪れることになります。
感想:
「赤と青とエスキース」は至福の喜びを提供する作品です。一枚の絵画に関するエピソードの結びつけが上手いと思います。読後に満足感を味わえました。赤と茜、青は蒼なんですね。それぞれの章でエスキースの登場の仕方が異なる点も圧巻でした。
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