あらすじ:
「死んだ山田と教室」は、金子玲介(かねこれいすけ)さんによる第65回メフィスト賞受賞作で、2024年5月15日に発売された青春小説です。物語は夏休みが終わる直前の8月29日に飲酒運転の車に轢かれて亡くなった二年E組の人気者・山田を中心に展開します。山田はバンド活動をしたり、先生達のものまねをしたりと、男子高校の人気者でした。 新学期が始まり、悲しみに沈むクラスメートでした。空いた山田の席が教室の真ん中にそのままになっていると、いないことを意識して凹んでしまうので、元気づけようと担任の花浦が席替えを提案します。花浦は生徒からルーズリーフを1枚借りて席替えのために1から35まで書いたくじを作ろうと考えますが、生徒達はノートしか持っていません。ノートをちぎるのは悪いので何か要らない紙など持っていないかと聞いても、誰も返事をしません。
しばらく経った後、教室のスピーカーから山田の声が聞こえてきます。
「いや、いくら男子校の席替えだからって盛り下がりすぎだろ」
死んだ⼭⽥の魂はスピーカーに憑依したのです。⼭⽥にできることは、話すことと聞くことだけとなります。
「俺、2年E組が⼤好きなんで」
この奇妙な現象を通じて、山田とクラスメートの関係性が描かれていきます。声だけになった⼭⽥と、2年E組の仲間達の不思議な⽇々が始まります。
物語は男子校の日常とユーモアを交えながら進行し、山田の死後も彼がスピーカーを通してクラスメートとコミュニケーションを取る様子が描かれます。しかし、時間が経つにつれて山田はクラスメートとの間に溝を感じ始め、彼らが成長し卒業していく中で、山田だけがその場に留まることになります。この孤独と躊躇(ためら)いが物語の中心的なテーマとなります。
最終的に、山田の死の真相や彼の孤独、そして彼を支える親友・和久津(わくつ)との葛藤が明らかになり、青春の終わりと成長の痛みを描いた感動的な結末に至ります。この小説は、ありえない設定の中で現実的な人間関係を描き出し、読者に多くの感情を呼び起こす作品となっています。ご興味があれば、是非手に取って読んでみてください。
レビュー:
- 男子校の生徒達とのユーモラスでありながらも心温まる交流が描かれていますが、物語が進むにつれて、山田の孤独やクラスメートとの関係性の変化が切なく描かれています。
- 前半は男子高校生の軽快な掛け合いとユーモアに満ちていて楽しかったです。しかし、後半では山田の死と彼が抱える孤独、そして彼を取り巻く人々との関係の変化が、深い感動を与えました。
- 山田がスピーカーに憑依した存在として、生徒達との日常を送る中で、彼らが成長し卒業していく過程で感じる孤独感は、多くの共感を呼びました。また山田の死の真相や、彼と親友である和久津との関係が明らかになるにつれて、物語はより一層の深みを増していきました。
まとめ:
この小説はただの青春小説にとどまらず、死というテーマを通して人間の本質や生の意味を問いかける作品となっており、読後感も非常に強いものがあります。読者を笑わせ、そして考えさせる「死んだ山田と教室」は、新しい形の青春小説として高い評価を受けているようです。
もし作品に興味を持たれましたら、是非一度読んでみてください!
![]() |
死んだ山田と教室
|
![]() |
死んだ山田と教室
|
コメント