あらすじ:
「成瀬は天下を取りにいく」(単行本:電子書籍版もあります)(作:宮島未奈さん。第39回坪田譲治文学賞、2024年本屋大賞)は、滋賀県大津市を舞台に、中学2年生から高校3年生の夏までの5年間の成長期を過ごす主人公・成瀬あかりの日々を描いた青春小説です。成瀬は一見孤立しているように見えますが、飄々として自分の道を突き進む少女であり、閉店する西武大津店に毎日通ったり、M-1グランプリに挑戦したりするなど、独自の行動で周囲を驚かせます。
「島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」
主人公の成瀬あかりがそう発した台詞で始まるこの小説は、島崎みゆきという人物によって語られています。
物語は島崎みゆきと成瀬あかりの長い付き合いを描いています。島崎はごく普通の女の子で、成瀬とは同じマンションで育ちました。成瀬は幼少期から多才で好奇心旺盛な女の子で、立てた目標に向かって努力することを厭(いと)わず、周囲の同調圧力に屈せず、常に自分を貫いてきました。才能があり多くの人に注目されていましたが、その才能が原因で孤立してしまいます。特に小学5年生になると、成瀬は女子から無視され始めます。島崎は成瀬を守ることはせず、自分自身を守ることを選びます。
ある日成瀬はシャボン玉を極めると宣言し、ローカル局「びわテレ」のテレビ番組「ぐるりんワイド」に埼玉西武ライオンズのユニフォームの格好で出演して注目を集めます。その後、彼女は地元のデパートである西武大津店が閉店することを知り、夏の間、毎日そのデパートに通うことを決意します。島崎は成瀬のこの決意を支え、テレビで彼女の様子をチェックすることになります。
物語は成瀬が西武大津店の閉店までのカウントダウンを行い、毎日デパートに通う様子を描きます。島崎は成瀬の行動を支え、彼女がテレビに映るのを見守ります。成瀬はライオンズの応援をするかのように、グッズとバットを両手に持ってユニフォームを着てデパートに立ち、テレビに映ります。島崎は成瀬の行動を理解し、彼女の個性を受け入れるようになります。
この物語は、成瀬の個性と彼女の周りの人々との関係を通じて、成長と自己受容のテーマを探ります。成瀬は他人の目を気にせず、自分のペースで生きることを選びます。島崎は成瀬の行動を通じて、自分自身と他人を受け入れることの大切さを学びます。物語は個性を持つことの価値とそれを受け入れることの重要性を強調しています。
成瀬の行動は、時に周囲から理解されないこともありますが、彼女は自分の信じる道を進みます。西武大津店の閉店カウントダウンは、彼女にとって特別な意味を持っており、それを通じて彼女は自分自身と向き合い、成長していきます。島崎は成瀬のそばで見守り続けることを通じて、友情の深さと人としての成瀬の価値を再認識します。
また成瀬が万能ではなく、友人の助けが必要な存在であることが明らかになります。成瀬の優れた面だけでなく、不器用な一面も描かれ、彼女の人間らしさが浮き彫りにされています。
最終的に、物語は成瀬の個性が彼女を特別な存在にし、周囲の人々に影響を与える力を持っていることを示しています。成瀬の行動は、彼女が住むコミュニティにおいて変化と成長の象徴となります。島崎と成瀬の関係は、互いに影響を与え合いながら二人が共に成長していく様子を描いています。個性とは何か、そしてそれをどのように受け入れるかという問いに対する答えを探求しています。
物語は以下のようなエピソードで構成されています:
第1話「ありがとう西武大津店」
成瀬が中学2年の夏に、閉店を控える西武大津店に毎日通い、中継に映るという目標を立てます。彼女の目標は二百歳まで生きることであり、幼馴染の島崎との漫才コンビ、ゼゼカラでM-1グランプリに挑みます。
第2話「膳所から来ました」
成瀬の幼馴染みである島崎の視点から中学時代の成瀬が描かれます。
第3話「階段を走らない」
西武百貨店の閉店カウントダウン中継を見ている中年の男達の反応やエピソードが描かれます。
第4話「線がつながる」
成瀬が県内トップ校である膳所(ぜぜ)高校に進学し、新たな人間関係が描かれます。
第5話「レッツゴーミシガン」
高校競技かるたの近江神宮大会が舞台となり、成瀬が部長として全国大会にチームを率いて出場します。
最終話「ときめき江州(ごうしゅう)音頭」
初めて成瀬の視点から物語が展開され、彼女の内に抱える揺れる気持ちや葛藤が描かれます。
レビュー:
- 無双のようなストーリーで、物語の進行が軽快です。成瀬のキャラクターが魅力的で、物語全体がうまく繋がっています。
- 本作は短編集であり、サクサク読める点が良いですが、短編集特有の当たり外れがあります。特に第2話のM-1のエピソードが良かったです。
- 滋賀県を舞台にした物語で、登場人物達が織りなすストーリーに親近感を覚えます。成瀬のキャラクターが物語にアクセントを加え、笑いを誘います。
- ご当地小説としての魅力があり、滋賀県に対する愛が感じられます。地元を愛する成瀬あかりのキャラクターが愛おしいです。
- 成瀬あかりというキャラクターは、行動力と向上心が高い女の子として描かれており、彼女と関わる人々の悩みや成長が巧みに描かれています。
読者の感想を通じて、「成瀬は天下を取りにいく」は多くの人々に愛され、そのユニークなキャラクターと地元愛溢れるストーリーで注目を集めていることが伺えます。
この小説は成瀬あかりのキャラクター設定が非常に魅力的であり、彼女の独特な言動や考え方が物語全体を彩っています。成瀬の成長とともに周囲の人々との関係や交流を描くことで、読む人に深い感動と共感を与える作品となっています。興味を持たれた方は、是非手に取ってご自身でその魅力を確かめてみてください。
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